このブログでは理系大学院卒の私が、先行研究を参照し科学的な視点を加え、様々な料理のレシピを紹介していきます。
今回は冷凍保存されたチャーシューを解凍する方法についてです。
解凍するときも冷凍するときと同じく、氷の結晶成長/融解のコントロールが重要になってきます。
ここで紹介する解凍方法はチャーシューだけでなく、生の肉や魚にも応用できるので、解凍の仕方をしっかり理解しておいしい食材を長く楽しみましょう。
チャーシューを解凍するうえでのサイエンス
一般に、食材を解凍する際には、
- 解凍終了後の温度を低くする(5℃以下)。
- ドリップ量を少なくする。
- 最大氷結晶融解帯を早く通過させる。
の三点が重要であると報告されています。1)
チャーシューの解凍においても、この方針に基づいて考えていきましょう。
まず解凍終了後の温度を低くするというのは、菌の繁殖、酵素反応を抑えるという点で大事です。
また、余分に火が入るということも防いでくれます。
そしてドリップは日本食肉消費総合センターによると、
一般には冷凍肉を解凍したときに肉の内部から分離して出る液体のこと。
食肉を緩速凍結すると氷結晶の体積が増加して、細胞組織が損傷し、解凍すると細胞内の可溶成分(たんぱく質、エキス分、ビタミン類など)までも水分とともに細胞外へ流出するため、食肉のうま味が低下する。
と言われています。2)
食材のおいしさの面でも栄養面でもドリップをいかに出さないかが大事になってくるのですね。
解凍終了後の温度を低くするのとドリップの流出を防止するためには、低温で食材を解凍することで達成できます。1)
すなわちチャーシューを冷蔵庫、もしくは氷水の中で解凍することが望ましいです。
最後に最大氷結晶融解帯を早く通過させるという点についてです。
最大氷結晶生成帯というのは-1~-5℃の温度帯のことで、この温度帯では氷の結晶が大きく成長し、食材の組織を物理的に傷つけてしまいます。
詳しくはこちらのページをご覧ください。
食材を冷凍するときだけでなく、解凍するときもこの温度帯をいかに早く通過させるかが重要です。
以上の点をまとめると、チャーシューを解凍するときは、
低温で、できるだけ短い時間で解凍する
ことがベストです。
チャーシューを解凍する方法
では具体的にどのようにしてチャーシューを解凍したらよいのでしょうか。
冷蔵庫や氷水の中で解凍しているだけでは最大氷結晶融解帯を短時間で通過することができません。
そこで登場するのが扇風機です。
冷蔵庫の中に入るコードレスの扇風機を用意してください。
そうです。
冷蔵庫中で扇風機を食材にあてて、熱交換を促進してやればよいのです。
このような扇風機を用意して、冷蔵庫内で冷凍チャーシューに風を当て続けます。
冷蔵庫内で熱交換を促進してあげることで、ドリップ量を抑えられ、かつ早くチャーシューを解凍できるでしょう。
今度どれくらいドリップ量が抑えられ、早く解凍できるか実験して報告します。
もちろん扇風機を用意するのがめんどくさいという方もいらっしゃるでしょうから、そういう方は普通に冷蔵庫で解凍してください。
多少ドリップが出て時間もかかりますが、、、
以上がチャーシューの解凍方法になります。
今回ご紹介した方法はチャーシューの解凍方法でしたが、生の肉や魚を解凍するときにも、この解凍方法の効果を実感できるでしょう。
ぜひ試してみてください。
参考文献
1)斎藤貴美子 (1996) 冷凍魚の解凍について, 日本調理学会誌, 29, 67-72
2)日本食肉消費総合センター http://www.jmi.or.jp/info/word/ta/ta_140.html