このブログでは理系大学院卒の私が、先行研究を参照し科学的な視点を加え、様々な料理のレシピを紹介していきます。
今回は中華料理の回鍋肉(ホイコーロー)の作り方、レシピを紹介します。
オリジナル要素として自家製チャーシューを使用するレシピですが、その他は比較的本格的なレシピなので、中華料理好きな方は大満足なレシピとなっております。
少々手順は複雑ですが、ぜひ作ってみてください。
回鍋肉とは
回鍋肉は四川料理を代表する料理で、日本でもよく食べられています。
中華料理屋さんで誰もが注文したことのある、比較的ポピュラーなものでしょう。
しかし、四川料理の回鍋肉と日本で食べられている回鍋肉は大きく異なっています。
異なる点は大きく分けて三つで、
1. 具材の違い
日本では回鍋肉といえば豚バラ薄切り肉とキャベツの炒め物というイメージですが、四川では違います。
四川では豚バラブロック肉と葉にんにくという食材を用います。
葉にんにく...聞きなれない名前ですが、要はにんにくの葉です。
スーパーで見つけることは難しいかもしれません。
推測ですが、陳健一さんは葉にんにくの入手が難しいからキャベツを使うレシピを広めたのでしょう。。。
詳しい方がいたら教えてください。
2. 調理法の違い
中華料理は調理法、材料がそのまま名前になっていることが多いです。
「回鍋肉」はどういう調理法を表しているのでしょうか?
「回」は「戻る、帰る」を表します。「鍋、肉」はそのままです。
つまり、一度鍋で加熱した肉を取り出して、もう一度炒めるという意味になります。
ゆでたブロック肉を取り出してスライスして最後に炒めるんですね。
薄切り肉をそのまま炒めるより低い温度でゆっくり火が入るので、しっとりとしたお肉に仕上がりそうです。
野菜も同様に、一度火を入れてから最後に豚肉と合わせて一気に火を入れます。
炒める前に下揚げする、「油通し」という技法です。
この前処理をすることで炒める時間が短縮でき、食材からの脱水を和らげることにつながります。
実際、油通しをしたピーマン、白菜は油通しをしていないものよりも、脱水が少なく型崩れしていないという研究があります。1)
中華料理は肉も野菜もあらかじめ火を通しておき、最後に一気に強火で炒めて完成させるという手法をとります。
上記に示したようにいろいろなメリットがあるほか、前処理を施すことで同じタイミングで火入れが完了するよう加熱時間を調節できるというメリットもあります。
普段の炒め物にも応用できる技術なので、ぜひ試してみてください。
3. 味付けの違い
日本では甜麺醤メインの甘辛い味付けをしますが、四川料理では豆板醤やラー油がメインの辛い味付けに仕上げます。ここも大きな違いでしょう。
また、豆鼓という発酵させた黒豆をもちいることも特徴の一つです。
日本ではあまり用いることがない調味料ですが、スーパーで手に入ると思います。
非常にうまみのある調味料で、麻婆豆腐なんかにも使えます。
今回は豆板醤等とあわせて「豆鼓醤」なるものを使っています。
回鍋肉の材料
豚バラチャーシューブロック 150 g
キャベツ 200 g
ネギの白い部分 1本分
にんにく 2片 (10 g)
豆鼓醤 大さじ1
ラー油 大さじ2
醤油 5 cc
紹興酒 10 cc
鶏がらスープ 30 cc
だいたい2人前くらいの量です。
今回は少し楽をするために仕込んであったチャーシューを使いました。
もしなければ、豚バラブロック肉をネギの青い部分としょうがと一緒に弱火で1時間ほど茹でたものを用意しましょう。
ポイントはお肉が固くならないように、お湯がコポコポとなるくらいの火加減で茹でることです。
チャーシューのレシピはコチラ。
葉にんにくはやはり手に入らないので、今回は日本の中華らしくキャベツを使います。
食感が似ているネギと、にんにくを多めに入れているので四川風の雰囲気は出るかなと...
手に入る方は是非葉にんにくを使ってみてください。
豆鼓醤は豆鼓、豆板醤、にんにく、しょうがを炒めたものです。
ストックしておくと麻婆豆腐や担々麺に使えます。
豆鼓醤の作り方はコチラ。
ラー油はできたら自分で作った方がよいのですが、厳しそうなら市販のものを使っていただいて構わないです。
辛いのがお好きな方はじゃんじゃん入れちゃってください。
自家製ラー油のレシピはコチラ。
醤油は中国醤油(老抽王)を使うと雰囲気が出ます。これもなければ市販のものでよいです。
鶏がらスープも同じです。なければ顆粒タイプのものを規定量お湯に溶かしたものを使いましょう。
回鍋肉のレシピ
- チャーシューを0.5 cmくらいの厚さでスライス、キャベツはざく切り、ネギは斜め切り、にんにくはスライスにする。
- 醤油、紹興酒、鶏がらスープを合わせておく。
- キャベツ、ネギを多めの油で少ししんなりするまで揚げるor炒める。(油通し)
- フライパンに少し油をひき、弱火でチャーシューの表面に焦げ目をつける。
- 焦げ目がついたら弱火のまま豆鼓醤、にんにくをいれ、にんにくの香りを出す。
- にんにくが焦げる前に合わせた調味料を入れ、中火で水分を飛ばす。
- 水分が飛んでもったりしてきたらキャベツ、ネギを入れ、強火でさっと合わせる。
- 最後にラー油を鍋肌から回し入れ、さっと混ぜて完成。今日はこれで決まり。

材料一覧です。

豆鼓醤、ラー油以外の調味料はあらかじめ合わせておきましょう。
中華は手際、時間が命です。材料は手元に全部用意しておきましょう。

油通しはほぼ炒めるみたいな感覚でよいかと思います。
油もったいないしね。
中華鍋や鉄製のフライパンをお持ちの方は是非そちらを使ってあげてください。
比熱が高いので食材を入れても鍋の中の温度が下がりにくく、高温でおいしい焦げ目をつけることができます。(メイラード反応)

とりあえず完成。
コツは如何に水分を出さず手早く調理できるかだと思います。
そのためには豚肉にあらかじめ火を入れておき、野菜に油通しをし、調味料をあらかじめ混ぜ合わせ手元に用意しておき、最後に調味料の水分を飛ばして手早く合わせる、といった一連の流れが大事になってきます。
豆鼓醤を作ったりいろいろと大変ですが、ストックのきくものばかりなので、まとめて作っておいて、おいしい回鍋肉ライフを楽しんでください。
参考文献
1)松本睦子, 吉松藤子:炒め調理における油通しの効果について, 調理科学, 16, 40-46 (1983)
参考にしたレシピ
Cooking Maniac 【レシピ】本当の回鍋肉はキャベツが入らないし、超激辛!?回鍋肉の起源!「四川式回鍋肉」の作り方!
http://cookingmaniac.net/archives/43022401.html (2019/07/01閲覧)