エントロピーとは

NaCl-H2O系

このブログでは理系大学院卒の私が、科学的な視点から様々な調理工程の「なぜ」を解説していきます。
今回はかなりサイエンス寄りなのですが、エントロピーについての話です。

エントロピーとは、「乱雑さ」を表す熱力学系の状態量です。
沸点上昇の回でエントロピーの考え方が出てきましたが、エントロピーという概念が理解できていない方も多いはず。
ここではエントロピーというものの考え方についてお話いたします。

エントロピーの概念をマスターできれば、パスタを茹でるお湯に塩を入れたときのモル沸点上昇についての理解も深まるはずです。

パスタを茹でるお湯に塩を入れたときのモル沸点上昇
沸点が上昇するメカニズムをエントロピーの観点から解説します。

エントロピーの熱力学的理解

エントロピー\(S\)は熱量\(Q\), 絶対温度\(T\)を用いて、

$$S \equiv \frac{Q^{rev}}{T}$$

であらわされます(revは可逆過程)。このエントロピー\(S\)を、圧力\(P\)、体積\(V\)、温度\(T\)を用いて表しましょう。
ある系に\(Q\)を加えると、\(W\)の仕事をするから、

$$ \begin{eqnarray} dQ^{rev} &=& -dW \\\\ &=& -(-P_{out}dV) \\\\ &=& P_{in}dV \\\\ &=& \frac {nkT}{V}dV \\\\ &=& nkT \frac {dV}{V} \end{eqnarray}$$

となります。\(k\)はボルツマン定数です。
よって始状態\(i\)と終状態\(f\)におけるエントロピー差\(\Delta S\)は、

$$ \begin{eqnarray} \Delta S &=& \int _i^fdS \\\\ &=& nk\int _i^f \frac {dV}{V} \\\\ &=& nk[\ln V_f - \ln V_i] \\\\ &=& nk\ln \frac {V_f}{V_i} \end{eqnarray}$$

となり、体積のみで表すことができました。

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エントロピーの統計学的理解

統計学では、エントロピー \(S\)は

$$S = k\ln W$$

で表されます。この式からも、先ほどの熱力学におけるエントロピーを導くことができます。
まず、体積\(V\)の空間中に、ある気体分子1個が入っている確率\(W_1(V)\)は、

$$W_1(V) = aV$$

となり、比例定数を\(a\)として、体積の一次関数として表せます。
さらに、体積\(V\)の空間中に気体分子2個が入っている確率\(W_2(V)\)は、

$$\begin{eqnarray} W_2(V) &=& W_1(V) \cdot W_1(V) \\\\ &=& a^2V^2 \end{eqnarray}$$

となります。同様に分子が\(n\)個入っている確率\(W_n(V)\)は、

$$W_n(V) = a^nV^n $$

であらわされ、ここで上記の\(S = k\ln W\)を用いると、\(\Delta S\)は、

$$\begin{eqnarray} \Delta S &=& S_f - S_i \\\\ &=& k\ln (a^n \cdot V_f^n) - k\ln (a^n \cdot V_i^n) \\\\ &=& nk\ln \frac {V_f}{V_i} \end{eqnarray} $$

となり、熱力学で導かれた\(S\)と一致していることがわかりました。

エントロピーのイメージ

以上の計算結果から、エントロピーのイメージを可視化してみましょう。
上の方でお話ししましたが、エントロピーは「乱雑さ」を表し、熱力学第2法則からエントロピーは増大し、ととのっている状態から乱れた無秩序な状態に進行するとよく言われます。
しかしこれだけではエントロピーのイメージがつかみにくいので、統計力学の観点も加えて考えると、エントロピーは「場合の数」のへんすうであることがわかります。
まとめると、

エントロピー小さい

ととのっている
場合の数小さい
質が高い
固体結晶

エントロピー大きい

乱れている、無秩序
場合の数大きい
質低い
液体、気体

のようになります。エネルギーの質のお話はまた別の回でお話させていただきます。

具体例として、純水に塩を入れる場合を考えます。
簡単のため、10個の水分子が10個の場所を占めている系を考え、そのうち2個の水分子をナトリウムイオンと塩素イオンに置換すると、図のようになります。

H2O系エントロピー
NaCl-H2O系エントロピー

左の状態では水分子の位置は1通りですが、NaCl分子が入ることにより、右の状態における場合の数は、

$$ \frac {10!}{8!1!1!} = \frac {10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 7 \cdot 6 \cdot 5 \cdot 4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1}{8 \cdot 7 \cdot 6 \cdot 5 \cdot 4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1 \cdot 1 \cdot 1} = 90 $$

と、90通りとなり、塩を入れた場合エントロピーが増大します。

いかがでしょうか。エントロピーのイメージはできましたか?
このあたりの解釈は人によって異なると思うので、いろいろな人と話をしてエントロピーのイメージを固めていってください。
もちろん私の解釈についても批判等受け付けております。

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